第4回 ファイバプローブの作製

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第4回 ファイバプローブの作製

 第1回の図1.1にあるファイバプローブを作るのはそれほど容易ではない。次の問題を解決する必要がある。
(1)伝搬光からドレスト光子(DP)へ効率よく変換するためのファイバプローブの形状の設計。(2)ガラスファイバを尖らす加工方法の開発。
まず(1)については巨視的な寸法の伝搬光(オンシェルの光子)とナノ寸法のDP(オフシェルの光子)との関係について知る必要がある。これはミクロとマクロの双対性の議論に関連しており[1]、光を量子場とみなす必要がある。この問題についてはいまだ満足すべき解答を得ておらず、これを得ることこそが本RODrePの主要な研究課題の一つである。
次に(2)については、西暦1980年初頭に開発が進んだガラスファイバを用い、それを尖らすことを試みた。有望な方法として酸性溶液によるエッチングを考案した。しかし、初めのうちはうまく尖らなかった。むしろ図4.1のようにへこんでしまう場合もあった。その後試行錯誤を繰り返し、ついには図4.2のように鋭く尖ったものができるようになった。これをもとに第1回の図1.1のようなファイバプローブを作ることができた。

図4.1    図4.2

図4.1 へこんだファイバ          図4.2 尖ったファイバ

なお、ガラスはアモルファス材料であり、構成する原子の配列は結晶とは違い不規則である。従ってなぜ図1.1のように尖るのか、なぜその先端の曲率半径が10nmまたはそれ以下になるのかはいまだ不明である。すなわち、先端に存在する少数個の原子の間の相互作用により、このように小さな突起形状が形成されているということは、この先端部分はアモルファスとしての性質を保っているかどうかも不明である。言い換えるとアモルファスという概念はこのように小さな寸法の物質に対して、成り立つかどうかということである。ナノ寸法の物質の性質に関する研究をさらに進める必要があろう。
以上の(1)、(2)の問題を半ば経験的に解決しつつ、現在では多様なファイバプローブが開発されている。これらは高倍率の顕微鏡や関連する装置に組み込まれている[2]。それらは使用目的によって異なる形状、構造を持っている。代表例を図4.3に示す[3,4]。

図4.3

図4.3 多様なファイバプローブ用の先鋭化ファイバ

 

参考文献
[1]小嶋泉 「量子場とミクロ・マクロ双対性」(丸善、東京、2013)
[2]Y. Narita, T. Tadokoro, T. Ikeda, T. Saiki, S.Mononobe, M. Ohtsu, Appl. Spectroscopy 52, 1141 (1998).
[3] M. Ohtsu, Near-Field Nano/Atom Optics and Technology (Springer, Tokyo/Berlin, 1998) pp.31-70.
[4]大津元一「近接場光の基礎」(朝倉書店、東京、2003)pp.39-44.